会社名 | 摘発の年月 | 会社側の関与者 | 供与金額 |
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伊勢丹 | 84年5月 | 社長室長 | 105万円 |
そごう | 86年7月 | 秘書室長 | 15万円 |
ノリタケカンパ | 86年7月 | 常務ら3人 | 845万円 |
ニーリミテド | |||
桜護謨 | 86年10月 | 社長ら3人 | 1065万円 |
小西六写真工業 | 87年2月 | 総務部長ら3人 | 150万円 |
住友海上火災保険 | 87年4月 | 総務部長ら2人 | 200万円 |
パルコ | 88年10月 | 前専務ら3人 | 200万円 |
富士火災海上保険 | 89年5月 | 取締役ら3人 | 200万円 |
北海道振興 | 90年10月 | 会長ら3人 | 940万円 |
野村証券 | 91年6月 | 総務副部長など | 350万円 |
大和証券 | 4社で計7人 | ||
日興証券 | |||
山一証券 | |||
イトーヨーカ堂 | 92年10月 | 監査役ら3人 | 2740万円 |
キリンビール | 93年7月 | 総務部長ら4人 | 4600万円 |
NTN | 93年11月 | 総務部長ら3人 | 450万円 |
時期 | 企業名 | 事件名 |
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2月 | 金門製作所 | 談合 |
愛知時計電機 | 同 | |
3月 | 味の素 | 総会屋への利益供与 |
野村証券 | 同 | |
5月 | 第一勧銀 | 同 |
7月 | 山一証券 | 同 |
9月 | 日興証券 | 同 |
大和証券 | 同 | |
10月 | 北国銀行 | 背任 |
松坂屋 | 総会屋への利益供与 | |
三菱自動車工業 | 同 | |
11月 | 三菱電機 | 同 |
東芝 | 同 | |
日立製作所 | 同 | |
三菱地所 | 同 |
総会屋は戦前からあり、財閥の内紛の処理に使われたと言われる。70年代頃から暴力団が進出するようになった。改正商法(82年施行)の単位株制度と利益供与禁止は、大物総会屋には効果がなかった。97年の罰則強化と利益供与要求罪の新設、警察の取り締まり強化によって総会屋は激減した。
一株株主運動などへの対策にも総会屋は使われてきた。
日本の会社の、内輪のトラブルを隠そうとする体質や、社長を神様扱いし、社長が公衆の面前で面目を失うことをおそれる体質が、総会屋を生んでいる (注1) 。 総会屋を排除して株式総会を活性化するには会社のあり方を改革するほかない。
単位株制度と株主総会開催日の集中化によって総会屋の数は減ったが、株主総会の形骸化は促進された。
総会屋の発言を抑圧しつつ、他の株主の議論を活性化するために、ドイツのように「公認」された株主団体の活用が考えられる。
法人の株式所有が諸悪の根源だ。アメリカのように銀行の株式保有を禁止すべきだ。持株会社解禁などもってのほかだ。「共通の目的をもった株主のアソシエーション」という株式会社の性格を守るために、法人株主の議決権を剥奪せよとハイエクも言っている。
株主総会無用論。(1)株主にとって株主総会は活性化する必要がないから無用だ。(2)株式会社の実態は経営者権力組織と化しているのだから、株主は監査役の議決権のほんの一部だけを持てばよい。――しかし株式会社という形態をとる限り、タテマエとしての株主総会をなくすことはできない。そこで問われているのは、株式会社制度そのものを存続するのかどうかということである。
会社が情報をかくすから株主総会が形骸化する (注2) 。原価法による不良資産水増しや粉飾決算が行われ、株主の権利がおかされている。日本のアナリストは銀行や証券会社のお抱えで信用できない。
企業スキャンダルを知ってても書かないジャーナリズムが総会屋をはびこらせ、株主総会形骸化を促進している (注3) 。
会社は広告部による情報統制をやめて、内部告発を通報できる社会部をつくれ。
日本の会社構成員の行動様式は天皇制軍隊のそれの名残りである。従業員は上司に向かって臣下として振る舞い、重役たちは社長個人に向かって臣下として振る舞うので、社長が現人神になってしまう。会社は機能集団であるはずなのに、それが帰属すべき実体となっている。日本の会社は階層構造をもつ身分制度である。アメリカの会社ではCEOをビル呼ばわりしている。株主総会活性化のためには身分制度の廃止が必要だ。
会社改革は、総会屋対策を担当する総務部と、身分制度を維持するための人事部を解体するものでなければならない。
株式会社形骸化は欧米でも共通している。これは株式会社そのものの危機だ。株主主権、株主平等、資本多数決という原理は根拠を失ってきている。民主主義と資本主義の矛盾は株式会社に端的にあらわれている。
パートナーシップ会社(合名会社)、非営利の労働者協同組合などの形態も台頭している。株式会社は株主主権をタテマエにすることができなくなり、共同決定法のように従業員が発言力を持つのが普通になるかもしれない。外部からの消費者の監視も強まる。
そもそも著者はなぜ株主総会を活性化せねばならないと考えているのか、よく分からない。株式会社の破綻に民主主義と資本主義の矛盾が現れており、それがたいへん結構なことであるとすれば、株式会社の維持のために努力することもないと思うのだが…
株主総会活性化とどうして関係あるのか理解に苦しむ記述が非常に多い。総会屋が激減したのに株主総会形骸化が進んだのなら、総会屋はこの問題の本質に関係ないのではないか。天皇の軍隊や身分制度や総務部や人事課長は、株主総会活性化と関係あるのだろうか。マスコミは株主総会活性化に責任を負わないといけないのだろうか。たんに、株主の第一の関心は金儲けにあるからではないのか
情報公開は株主にとって、投資保護のために必要であり、今後進まざるをえないだろう。だが、それが株主総会活性化につながるわけではない
ビルの会社の内部は日本企業とおなじく、(民主主義ではなく)階層構造をもつ専制支配の体制である。もちろん身分制度ではない
「株主主権、株主平等、資本多数決」が根拠を失いつつあるのだとしたら、協同組合の所有者主権・所有者の平等・財産所有者の多数決も根拠を失いつつあるのではないか(労働者協同組合の場合は事情が異なるが)
共同決定法の位置づけ。所有者民主主義からの前進?とはいえ、資本関係を変えるものではない
「消費者主権」について。消費者は企業の所有者でも労働者でも何でもない。モノを買っただけなのだが、そのモノをつうじてある社会性と関係する。その社会性とはモノの使用価値の社会性? それをつうじての資本の生産過程の社会性?
(注1) 日本の会社の体質と総会屋は切り離すことができないというのが奥村氏の主張であるが、さらに進んで、総会屋・ヤクザ・暴力団こそが日本資本主義を特徴づけるものだという主張も存在する。
「3番めは、日本資本主義の「異質」な性格そのものについてです。「企業大国」・「生活小国」的発展を必然にした…また今回の不況を先進国のなかでもとりわけ深刻なものとした日本資本主義・日本資本の歴史的・社会的性格です。今回これがたいへん明瞭に露呈されたわけですがこれをわたしは「ヤクザ」型と特徴づけたいと思います。「大塚史学」では、早くから、「前期的資本」として特徴づけられている性格でもあります。
そもそもどの国の資本主義もそれぞれの国の国民的性格を刻印されています。その資本主義を現実に動かしているのは、それぞれの国の生身の人間ですから。…大江健三郎氏が、あいまいさとか、上品さが欠けているとか、あるいは、現実を原理・原則と結びつけて考えようとしないということを、日本社会の特徴として深刻に考えているということを…いっています。…彼は文学者ですから、そういう詩的な表現でいうわけですが、わたくしは社会科学者ですから、「ヤクザ」という言葉で表現したいと思います。
わたくし流に言いますと、戦後日本資本主義の性格というのは、資本主義の最悪の面である、あくなき利潤の追求・拝金主義・コマーシャリズム・過当競争と、封建遺制である共同体的・家父長的原理――その最たるものが親分子分関係、義理と人情に結ばれたヤクザの世界・「組」組織の慣習です…――が密接不可分に構造的に深く複雑に絡みあった…資本主義と言えると思います。…社会システム全体としては、談合・系列・リベート・価格後決めなどの商取り引き慣行、根回し、ヤクザ・暴力団そのものである総会屋の存在と暗躍、これらのものの存在や役割を考えただけでも…儲かることなら破廉恥なことでもなんでもやるという企業行動を支え日本経済の発展の強力なバネ・太い柱として役立ってきているのです。
そして、こういうことが成り立つ基礎としてあるのは、一方では旧財閥系大銀行・大企業同志が株式持ち合いや定期的社長会などを通じて集団として結束し、他方では各企業集団間の根回しを通じて互いに依存し保証しあっているというあり方であって、いわゆる法人資本主義です。…
とりわけ日本社会の特殊なあり方を具体的に示す典型が今回指弾の的になった談合や「地上げ」です。この談合というのには、仕切り役がいます。この人物は、ヤクザの世界で万事を問答無用で仕切る親分の役割と同じ役割を果たすわけで、こういうヤクザの慣行が…日本の経済社会のなかに浸透しているのです。」(川鍋先生最終講義「『平成不況』の歴史的意義」、『立教経済学研究』49巻3号)
(注2) 奥村氏によると、株主総会形骸化には会社側だけでなく株主にも「責任」があるそうである。
◆株主は「発言責任」果たせ ◇奥村 宏・中央大学教授
97.06.27 大阪読売朝刊
株主は、会社側に委任せず、出席して発言しなさい。日本企業の株主は七割が法人だが、その法人株主が発言しないのは、その法人株主である企業自身の株主に対する責任を放棄することになる。特に生命保険会社の場合、保有株式は保険加入者の資産なのだから、動議を出し、加入者の意見を代弁しなさい。ただでさえ株式の配当は低いので、加入者は不満を持っている。責任を果たし、経営を追及するべきだ。…
政府も、日本電信電話(NTT)や東日本旅客鉄道(JR東日本)の株主なのだから、国民の代表として株主総会で発言するべきだろう。これは地方公共団体も同じだ。アメリカでは、きちんと社会的責任を果たそうという動きがある。日本もいずれは、行動しないことの責任を問われるようになる。
個人株主も、白紙委任することなく、納得するまで発言すべきだ。
(注3) 会社民主主義の欠如にたいするマスコミの責任を重くみる奥村氏は、朝日新聞の「私の紙面批評」を担当し、「若者にも読まれる新聞を」(1992年3月7日朝刊)などと苦言を呈している。