日時 | 1999年06月13日(第60回例会) |
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場所 | 立教大学 |
テーマ | 『明日を支配するもの』(ドラッカー著),第3,4章 |
今回は『明日を支配するもの』の第3,4章について,検討を加えた。
第3章では,報告者は,ドラッカーがチェンジリーダーに現在の問題として与えている課題を,資本主義の本性に基づいてコメントした。ドラッカーがこの章で現在の問題として表現しているのは,生産の無政府性と生産の社会性との矛盾,従ってまた資本主義の本性に根差している矛盾である。個別的企業は,一方では自己の内部での悪無限的価値増殖を継続を志向しなければならず,他方では自己の外部での生産の無政府性に対応するために変化を志向しなければならない。更に,個別的企業は生産の社会性を企業内でも企業間でも発展させなければならないが,しかしこれはこれで生産の無政府性に対応するための変化(経営のフレクシビリティ)に矛盾する。こうして,結局のところ,資本主義は社会性を志向しながら,無政府性をなくなし得ない。このような矛盾は,ドラッカーが強調するのとは異なって最近の現状から発生するものでは決してなく,資本主義の本性から発生するものであり,但し最近の現状は人々の目に見えるまでにこの矛盾を拡大・深化させているのである。
第4章では,報告者は,一歩踏み込んで,ドラッカーの自己欺瞞と弁護論的性格とを問題にした。ドラッカーがこの章で問題にしているのは,事実上,社会的システムのシステム的矛盾──すなわち,テクノロジーの自立化として労働する諸個人から疎外されたものを情報として労働する諸個人にますます還元しなければならず,しかしまたますます還元し得なくなるという矛盾──である。ところが,ドラッカーにとっては,社会的システムの矛盾は解決済みのものでなければならないから,ドラッカーは社会的システムの矛盾を個々人のマネジメント能力の不足にすりかえてざるを得ない。このような自己欺瞞によって,ドラッカーは,結局のところ,システムの弁護論者としての役割を演じるしかなくなる。