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今井さま
感想をお寄せいただきありがとうございました。私も見ましたが、「DNA鑑定の功
罪」というテーマにもかかわらず、功と罪が上手く伝わっていませんね。10分の間
に両方を盛り込むのは無理があったと思います。
>ビデオにもとっておきました。
私ッタラ、ビデオを取り間違えてしまったので、もし良かったら貸していただけませ
んか? 本当は事務所で保管して置くはずだったのに・・・・・失敗。見ていない人
に貸してあげたいのです。
>>「戸籍法」やら「国籍法」や
>>ら「入管法」の問題点のなんやら
>
>を伊藤さんが解説してくれると,もっと話がすっきりすると思います。ご多忙
>のようです(それだけはよく解った)から,まぁ,少しお暇があったら,
このケースの問題点を上手く説明し切れてなかったですね。このケースは非常に複雑
です。
1)まず、クライアントであるフィリピン女性Sさんは日本人男性Kさんと結婚し
た。二人の関係がうまくいかなくなり別居した。別居中にSさんは日本人男性Wさん
(実はJFCである。父:フィリピン人、母:日本人)と関係を持ち、SさんはKさ
んの子どもJちゃんを出産する。その後Kさんと離婚する。
2)本来なら、子どもの出生届を市役所に届けでなければならなかったが、Kさんと
の婚姻中の子どもなので、Jちゃんは実父であるWさんの子どもと記載されずにKさ
んの子と記載されてしまう。Kさんの子となっては困るのでSさんはJちゃんが5歳
になるまで出生届を出さずにいたため、Jちゃんは無国籍状態であった。
3)フィリピンは日本と同じ血統主義の国なので、日本でJちゃんが生まれても、
フィリピン大使館に出生を届け出ればフィリピン国籍を取得できたのだが、母子とも
にオーバーステイであったため、発覚をおそれて届けずにいた。
4)Kさんと離婚後、ビザの期限が切れてオーバーステイであったSさんのもとに入
管から「違法滞在」の通知が来る。そして事務所に相談に来た。
5)その後の手続きは、
(1)「日本人の子」を育てる母親であるので「特別在留許可」をしてもらうよう弁護士
を通じて入管に事情を説明した。
(2)子どもが無国籍であるので、フィリピン大使館に出生届を出して、フィリピン国籍
を取得した。
(3)子どもの出生届を日本でも届け出た。JちゃんはKさんの子として戸籍謄本に記載
され、日本国籍を取得した。
(4)Wさんの子とするためには、まず、Kさんに「親子関係不存在」の裁判を起こして
もらい、その後Jちゃんが戸籍からはずれた時点でWさんに認知してもらう(*Kさ
んの子として記載されている間はWさんは実子であっても認知できない)。
(5)しかし、問題はKさんが行方不明であるため、「親子関係不存在」を証明すること
ができない。
(6)そこで、Kさんの代理人として弁護士に裁判を起こしてもらうが、「親子関係不存
在」を証明するために逆に「親子関係存在」を証明するしかない。そして肝心のDNA
鑑定が必要となった。
(7)「親子関係不存在」が証明されると、Jちゃんは戸籍からはずされ同時に日本国籍
も失う。その後実父であるWさんから認知をしてもらうが、認知だけでは日本国籍は
取得できない。認知をしてもらえば、滞在許可は出る。
(8)もし、SさんとWさんが結婚すれば、Jちゃんは日本国籍を取得できるが(「準正
にいる国籍取得」)、ここでの問題はWさんは以前フィリピン人女性とフィリピンで
結婚したままになっている。
(9)Wさんのフィリピンでの婚姻は日本で届け出ていないのでWさんの戸籍には二人の
婚姻は記載されていないが、フィリピンでの結婚は日本でも有効なので、このままS
さんとWさんが結婚すると「重婚」となり(重婚罪)、後の結婚は無効のため、Sさ
んとの結婚は「無効」となってしまう。
(10)しかし、ここでの問題はWさんの妻であるフィリピン人女性もまた行方不明のた
め、Wさんは「離婚」できず、よってSさんとも結婚できない状態にある。
・・・・・・とまあ、長くなってややこしいですが分かりましたでしょうか?
>──結局のところなんでDNA鑑定が必要だった(つまりなんで伊藤
>さんたちがDNA鑑定を奨めた)のでしょうか。
(6)の理由。
>日本人の実父による認知があれば,その子の母親には定住が許可される
されます。
>けれども,そもそもBが積極的にDNA鑑定を受ける意志があるくらいなら
>ば,別にそんな鑑定を受けなくても任意認知すれば済むことである
(4)の理由から、Kさんの子として記載されている間は実父であっても認知できない。
このケースの問題点は、
1)日本人の父から「認知」してもらっても、日本国籍を取得できない点。
2)両親の婚姻中に産まれた子どもは、たとえ他の男性の子であっても、夫の子と記
載され、実父の意志があっても「認知」できない点。
その他「国籍法」「入管法」「戸籍法」の問題は様々にありますが、まあこんなとこ
ろで、失礼します。