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Y.K.君,ISM研究会の皆さん,今井です。Y.K.君,お忙しい中,どうもあり
がとうございます。ただいま忙しいので,簡単なコメントだけ。
>ドラッカーが最初に書いたのはファシズム論です。
例会では,俺は頭ごなしに“ドラッカーのファシズム論は与太話だ”と断言
したのはいいものの,皆さんからこの点について突っ込まれて,しどろもどろ
になってしまいました。正直に言って,俺はファシズム論をきちんとやってい
ないから,またファシズムもスターリニズムもマッカーシズムも──これらは
全部ドラッカーにとっては同じものですが──身をもって体験してはいないか
ら,よく解らないと言うのが実情です。
>彼の最終目標は、経済社会の『資本論』に匹敵する知識社会の『知識論』を
>書くことです。
以前からそんなこと言っていますし,“50年目から原稿を書きためている
が,まだ完成していないだ”なんて大ボラをふいてもいますが,まぁ,無理
でしょう。結局のところ,知識と労働との関連はドラッカーにおいては不明
確なのです。知識と労働とが異なっているということは自明のことだから,
ドラッカーは知識と労働とを固定的に(無関係なものとして)分離し,しか
しまた知識と労働とが同じであるということは自明のことだから,ドラッカ
ーは知識と労働とを直接的に(無理やりに)接着するのです。これがドラッ
カーの知識労働(知識+労働)だと思います。
>昔からドラッカーを読み支持してきた大企業の管
>理職がどんどんリストラされても、彼は全然動揺しないばかりかますます元気な
>のでしょう。
「昔からドラッカーを読み支持してきた大企業の管理職」は既にドラッカー
にとってプロレタリア前衛の資格を持っているのでしょう。そこで,今度は21
世紀の最大成長産業であるNPOに外部注入的に侵入し(ドラッカー(1999),
第230〜231頁),革命の尖兵として“細胞”を結成し,じわりじわりと市場社
会の破壊(同上,第59頁)に邁進していくということが期待されているのでし
ょう。めでたし,めでたし。
参照文献
ドラッカー(1999),P.F.,『明日を支配するもの』,上田惇生訳,
ダイヤモンド社