日時 | 2000年05月14日(第69回例会) |
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場所 | 立教大学 |
テーマ | 『環境経済学への招待』(植田和弘著),第1,2章 |
今回は『環境経済学』の中で,第1章と第2章とを検討した。植田の叙述は散漫でやや捕らえどころがない。従って,植田が提供している材料を,理論的に再配置してやらなければならない。
第1章はこの書全体へのイントロダクションである。ここでは,やはり環境問題の位置付けが問題になる。植田が提示している──従ってまた現代社会が提示している──総てのトピックスは資本運動とその制限性の露呈という枠組みに完全に収まる。
第2章はこれまでの環境経済学の系譜を纏めた理論サーベイ部分と環境経済学が扱う基本問題とである。理論サーベイ部分では,資本主義下での社会的意識の分裂・発展との関連で,環境経済学の諸理論を整理する必要がある。基本的には,弁護論と批判論とが分裂するのだが,弁護論もまた資本主義社会の諸局面に応じて細分化されるようになる。
また,基本問題部分では,環境経済学の諸範疇を再解釈する必要がある。特に環境についてのいろいろな経済学的規定は実は通常財がもっている諸性質を一面的に環境に押し付けたものであり,また環境問題が表現しているのは実は資本主義社会の社会問題が本質的に内蔵している諸特徴である。こうして,環境についての経済学的議論を通じて,われわれは資本主義社会を再把握することができるのである。